宮重法律事務所

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交通事故の加害者への保護者への責任追及について

交通事故の加害者の保護者への責任追及について

未成年者が、事故を起こした場合、未成年者自身に責任能力があっても、その親において、未成年者が、社会通念上許されない程度の危険行為を行っていることを知り、他人に損害を負わせる違法行為に及ぶことについて予見が可能であったことを主張立証することによって、親の監督責任違反による不法行為責任を追及できる場合があります                  

交通事故の加害者が、例えば、未成年者の運転する原付等のバイクであったような場合、自賠責保険には加入していたものの、任意保険には加入していなかったような場合も少なくありません。

このような場合に、未成年者本人には、被害者に対する賠償の資力や支払い能力に乏しい場合が通常です。

そのため、被害者側としては、未成年者の両親等の保護者の監督責任を問いたいところです。

この点、未成年者が、責任能力を有する場合でも、親の監督義務違反と子の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係が認められれば、監督義務者である親自身が、不法行為を問われうると、裁判上、解されています(最高裁s49.3.22参照)。その場合、事故発生の可能性と親の予見可能性、親の監督による事故発生防止の可能性が、判断され、親の不法行為責任が判断されることになりますが、具体的には、どのような場合に、裁判所は、親の不法行為責任を認めているのでしょうか?

 

交通事故により加害者(未成年者)の親の責任に関する裁判例

 

名古屋地裁H26.8.29

 

事案の概要 加害者の未成年(16歳)が、運転するバイクの後部座席に同乗していた被害者が、バイクが、カーブを曲がり切れずに、路外に逸脱して、川に転落し、被害者が、負傷し、12級の後遺障害を負った事例
加害者の生活状況と親の監督状況

加害者は、H20.10に原付、H21.3に自動二輪の運転免許を取得したが、中学生の頃から、これを無免許で運転していた

保護観察の特別順守事項に、無免許運転をしないことが挙げられていた

両親は、事故前から、加害者が、自動二輪の免許を取得したことや、自動二輪車を運転していることを知っていた

本件事故前、加害者は、友人宅を転々とする生活を送り、自宅には、親の留守を狙って食事や風呂に帰るだけであった

加害者は、両親に反対されることが分かっていたため、加害者自身の給料で、両親に隠れて、バイクを購入した

両親は、加害者が、自動二輪車に強い興味を持っていることを知っており、加害者が、自動二輪等を運転していることが分かれば、自宅から追い出したり、逆に、友人関係を当たって加害者を探す等して注意を与えていた

 

裁判所の判断

事故当時、両親には、加害者が、自動二輪車を運転しているとの認識があった可能性は否定できない。しかしながら、加害者の運転行為が、直ちに、危険性を有するものではなく、実際、本件事故は、加害者のカーブ通過時のハンドル等の操作ミスによるもので、無免許運転や蛇行運転等の危険行為によるものではない。

両親に、事故発生の蓋然性やその予見可能性、その監督による事故防止の蓋然性は認められない

本件事故について、両親の不法行為責任を問う被害者の主張は採用できない

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交通事故による加害者の親の監督責任に関する裁判例

 

大阪高裁H23.8.26

 

事案の概要 歩行者である被害者(85歳)が、14歳、中学2年生の運転する自転車に衝突され、負傷した事例。未成年者は、南北道路の東側を自転車で進行していたが、終始、右側をわき見しながら、約10メートル路側帯内を自転車で進行し、進路前方を全く見ていなかったため、路側帯内に立っていた被害者に後ろから衝突した
事故状況

「自転車は、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯を通行することができる」その場合「自転車は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」道路交通法17条の2

加害者は、自転車で進行するにあたり、路側帯内を、進路前方を全く見ず、終始、右側をわき見運転しながら、約10メートルにわたり進行し、衝突して初めて、被害者が、路側帯に立っていることとに気が付いたというのであり、加害者の無謀運転は際立っている。

 

保護者の監督責任の存否に関する判断部分

本件は、加害者の重大な過失によるものではあるが、所詮は、加害者が、塾に行く途中に非常に危険で無謀な運転をしていたというにとどまる

そして、両親からみて、本件事故当時、子である加害者が①社会通念上許されない程度の危険行為を行っていることを知り、または、容易に知ることができたことや、他人に損害を負わせる違法行為を行ったことを知り、そのような行為を繰り返すおそれが予想可能であることについて、控訴人は、具体的な主張・立証をしていない

よって、両親について、加害者の自転車運転に関する危険防止のための具体的な指導監督責任を認めることができず、両親の不法行為責任は認められない

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交通事故の加害者の保護者の責任の判断事例

  京都地裁h28.3.18
  加害者が、無免許で運転する車両が、小学生の集団登校の列に衝突し、2名が死亡
事故状況 現場付近でゆるやかにカーブした道路を遅くとも時速50㎞で進行していた加害者運転の車両が、道路中央を越えて右前方に逸走し、事故現場の右側路側帯を徒歩で、加害車両と同じ方向に進行していた小学生の集団登校の列に後方から突っ込み、引率者と児童に次々と衝突
加害者の生活状況

加害者は、父親と兄と同居していた

加害者は、中学2年の頃、原付の無免許運転を始め、中学3年の事、父親の保有する自動車を運転して無免許運転を始めた。

加害者は、h21.3、中学を卒業すると〇〇會と称して、20~30人で暴走行為を繰り返した

加害者は、h21.4定時制高校に入学したが、同年5月には退学し、短期のアルバイトを転々とした後、h23.2には仕事をやめ、遊興にふける生活を送っていた

加害者は、仕事を辞めたh23.2以降は、昼夜を問わず、〇〇會の構成員と、遊びたいときに遊ぶという生活を送り、h24.2頃からは、外泊の頻度が増加し、週2回は外泊し、2日以上帰宅しないこともあった

また、h24.2ころからは、頻繁に自動車を運転するようになった

父親の監督状況

加害者の父親は、h22夏頃から、知人に対し、加害者の雇用を依頼したり、加害者に対し、就労先を探すよう指導していた

また、父親は、加害者に対し、〇〇會の構成員との交友を控えるように注意していた

父親は、メールまたは電話によって加害者の所在や行動の確認をしていたが、返事がないこともあり、返事があっても、加害者の抽象的な申告をうのみにするだけで、外泊先に連絡することもなかった

父親は、加害者に対し、無免許運転をしていないか何度も問いただしてきたと供述するが、同父は、刑事公判においては、これを否定する供述をしていたのであり、前記供述は信用できない

親の監督責任の成否の判断

加害者は、自動車の運転に強い関心があり、かつ、無免許運転に対する規範意識が低いこと、〇〇會の構成員を交友を続け、h23.2に勤務先をやめた後は、昼夜問わず遊びふけって頻繁に外泊し、h24.2からはさらにその頻度を増していた

そうすると、移動に車を要するという地理的条件や加害者の運転に対する関心の高さ、規範意識の欠如から、加害者が無免許運転をする危険が高いこと、昼夜を問わない長時間の遊興によって、居眠り運転に至る危険性は高く、人の生命に危害を加える可能性があることも父親としては認識可能であった

父親は、加害者と同居し、無為徒食の加害者を扶養していたのであるから、加害者と問いただし、夜遊びや交友関係を制限し、就労させて、順法意識を涵養するよう努力すれば居眠り運転を回避できたはずである

父親には、前記の義務があったのに、加害者が、外泊外出する際に加害者にメールすることはあったものの、これに対して、加害者が返信しなかった場合でも、その行動を問いただそうとはせず、加害者の報告をうのみにするだけで、行動を調査しようとともしておらず、自動車の運転をしないよう指導することもなかったのであり、父親は監督義務を十分履行したとはいえない

よって、加害者の不法行為責任について、監督責任を負う

あなお、上記の事例では、加害者運転車両の同乗者にも、加害者の居眠り運転をほう助したとして、不法行為責任が肯定されていますが、その親の監督責任については「同乗者らが〇〇會の構成員と交友を継続し、h24.3頃からは外出が深夜に及んでいたことを認識していたととしても、直ちに、同乗者らが、加害者運転者の過労等運転の禁止の順守を妨げ、その違反をあおり、それを容認して、加害者をして、居眠り運転をほう助することまでも具体的に予見できた」とはいえないとして、監督責任を否定しています。

 

本件事故は、h24.4に発生しており、加害者は、h21.3に中学校を卒業していることからすると、事故当時17歳程度であったと考えられます。

冒頭で紹介した事例では、16歳の加害者について、親の監督責任を否定しており、年齢だけで、親の監督責任違反による不法行為の成否を判断しうるものではないということが分かります。

ただし、上記の裁判例の理由付けに詳しさと見てもわかるとおり、親の監督責任違反による不法行為の成立については、裁判所としては、具体的な事情を詳しく吟味した上で、親において、子供が不法行為に至り、不法行為による結果が発生することに対する予見可能性があることについて厳格に認定していることが分かります。

少なくとも、加害者が、責任能力を有する以上、親は当然に、子供の行った不法行為について、当然に監督責任違反に基づく不法行為責任を負うものではなく、加害者が、社会通念上許されない程度の危険行為を行っていることを知り、または、容易に知ることができたことや、他人に損害を負わせる違法行為を行ったことを知り、そのような行為を繰り返すおそれが予見可能であることについて、被害者側で具体的な主張立証をする必要があることになります。

 

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