宮重法律事務所
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名古屋地裁27.12.15(確定) | |
事案の概要 | 交差点における出合い頭事故。被害者(33歳)は、外傷性クモ膜下出血、びまん性脳損傷等の傷害を負う。H22.12.10事故発生。入院306日を含め、H24.9.20症状固定 |
高次脳機能障害の具体的な症状 | 記憶障害、注意障害、易怒性などの自覚症状が出現。h22.12下旬から、リハビリ開始。 H23.7.7医師による被害者の症状の具体的な内容の指摘 起立歩行が不安定 注意力が散漫 自分本位(人のことを考えない) 会話は普通 ときどき思考が抜けるときが見られることから、1人での生活は難しく、常時の付添は必要ないが、看視は必要。 今の仕事(運送業務)の復帰ができず、座り仕事の軽作業しかできない H24.8.31頃 食事や更衣など身の回りの動作を自立して行うことができるようになり 複雑な意思疎通が全くできなかったものが日常的な意思疎通(買い物等)ができるようになった 日常的な生活活動能力が全体的に低下 特に、施設、病院との連絡・調整、役所での必要書類の作成は、言葉以外の直接的な手助けが必要 対人面での好き嫌いが激しくちょっとした他人の言動に対してイライラして怒りをぶつけてしまい円滑な対人関係を築くことができない 人と付き合う場合に、社会常識や基本的マナーに基づいた行動ができない 施設に支払うべき金銭を別のことに浪費してしまうなど、日常生活に必要な金銭管理ができない 記憶・認識の面では、入院時と比べ、混乱や事実と異なる事実への執着がなくなった
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認知機能に関する神経心理学的検査 | 有り。WAIS-Ⅲ VIQ69 PIQ79 FIQ71 |
記憶機能の障害テスト | 有り。三宅式記銘力検査 有関係9,9.9 無関係対語3,5、5 |
注意力障害テスト | 有り。かなひろい20ケ/2分 見落とし0 |
画像所見 | 脳MRI:大脳皮質下白質、橋右側に微小点状出血痕散在 左上側頭回背側部に梗塞巣 |
高次脳機能障害の状態のまとめ | 意思疎通能力は多少喪失、困難であるが概ね自力でできる 問題解決能力は相当程度喪失、困難はあるが多少の援助があればできる 持続力・持久力は、多少喪失、困難はあるが、概ね自力できる 社会行動能力は不明、人の好き嫌いが激しく些細のことで暴言暴力をきたす受傷前2年間の記憶がない、欲求を抑えられず手もとのお金を使い切ってしまう
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介護の要否 | 食事、入浴、用便、更衣、外出は自力でできるが、買い物は必要なお金を浪費してしまうため、他者が管理する必要があり介護が必要な状況 |
裁判所の障害等級認定 | 5級(自賠責の補足的な考え方5級;単純繰り返し作業などに限定すれば一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人と比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの 比較3級の補足的な考え方;自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや介助なしでも日常の動作を行える。 しかし、記憶や注意力新しいことを学習する能力、障害の自己認識円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって一般就労が全くできないか困難なもの |
事故後の就労状況 | h24冬頃、ケーキ屋での勤務を開始したが、数か月で退職。 h26頃簡単なパソコン入力などの事務作業を行うアルバイトを始めたが、対人関係のトラブルにより退職 その後、飲食店に勤務したが、同じく対人関係のトラブルにより数か月で退職 |
逸失利益 | 718万6486円(事故前3年間の平均年収)×0.79(障害等級5級の標準)×15.8027(32年ライプ、症状固定時35歳)=8971万7047円 |
後遺症慰謝料 | 1400万円(5級の標準) |
成年後見申立費用 | 6240円。これ以外の申し立てを依頼した弁護士費用は、相当因果関係なし |
成年後見報酬 | 月額2万円×12か月×17.6628(44年ライプ、35歳男性平均余命)=423万9072円 |
上記の事例の被害者の症状をみると、7級や9級の事例とは、高次脳機能障害の状態が、明らかに重いことが認められます。
上記の事例の被害者の状態とみると、7級や9級の事例とは、高次脳機能障害の状態が、明らかに重いことが認められます。画像所見も、7級や9級の事例と比較すると、より広く明確であったと考えられます。
また、財産管理に介助が必要であると認定したのと対応し、成年後見報酬を将来にわたって交通事故と相当因果関係のある損害と認定した点にも特徴があります。
他方で、近親者による将来の看視費用までは、必要性がなかったものと考えられます。