宮重法律事務所
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自転車が、センターオーバーして、対向四輪に衝突したような場合でも、自転車の基本過失割合は5割にとどまるとされています。
ここでは、自転車と自動車やバイクとの間の事故について説明いたします。
自動車を運転される側から、見ると、車道を走行している自転車の動きは、不規則なことが少なくなく、自転車の動きが危ないと感じることは少なくないかもしれません。
しかし、実際に、自転車と四輪車との間で、交通事故に至った場合には、仮に、自転車が、客観的にみると、相当危険な動きをしているような場合でも、事故における過失割合については、自転車側に相当有利に判断されるのが、裁判所の基本的な立場であると考えられます。
このことを明確に示すのが、自動車が、対面通行の道路の自車線内を走行していた場合に、対向車線を対向して進行してきた自転車が、センターオーバーして、車両に衝突してきたような場合です。
裁判所の基本的な考え方によれば、このようなケースであっても、自転車側の基本的な過失割合は5割とされており、あとの5割は、四輪車の方の過失と認定されています。
以上の内容からすると、自転車と四輪車との間で、事故に至った場合に、自転車側に5割程度以上の過失が認定されることはあまりなく(ただし、交差点において、自転車が赤信号無視し、四輪は青信号だったような場合は、自転車の基本の過失割合は8割とされています)、3~4割程度の過失が、自転車に認められるかどうかについて、争いになるケースが多いのではないかと思われます。
前方左側端の自転車が、急に右方に出てきたような場合も、四輪の過失の方が重めに見られる傾向があります。
自転車と四輪車との間で、よく発生する事故類型としては、自動車が、道路左側端を進行していた自転車の右側を通りすぎようとしたところ、自転車が、急に、道路に出てきたため、自動車と衝突するに至ったような場合です。
もっとも、そのような場合に、自転車が、道路に出てきた理由は、いろいろ考えられます。
例えば、前方左側に駐車車両があったため、自転車が、右によけようとしたところ、後ろから来た四輪車に衝突されたような場合で、このような場合の、自転車の基本過失割合は1割とされています。他方で、このような障害物がないにもかかわらず、自転車が漫然と右方に進路変更したような場合でも、自転車の過失割合は、2割程度とされています。
また、自転車が、交差点以外の場所において、道路を横断してきたような場合も、自転車側の基本過失割合は、3割にとどまるとされています。
左側端を進行(あるいは左側にいた)していた自転車が、右方に出てきた原因 | 自転車の基本過失割合 | 別冊判タNO38の事故類型 |
前方左側の障害物を避けるため進路変更 | 10% | 【306】 |
障害物がないのに進路変更 | 20% | 【307】 |
交差点以外の場所における道路の横断 | 30% | 【310】 |
交差点の出合い頭事故では、優先道路規制や一時停止規制等に違反した自転車の過失は、重めに認定される印象があります。
他方で、交差点においては、赤信号無視以外にも、比較的、自転車の過失は高めに設定されているように感じられなくもありません。例えば、交差点における直進者同士の出合い頭事故の場合自転車の進行してきた道路側に一時停止規制がある場合は、自転車の過失は、基本4割とされ、さらに、もし同じ状況で、四輪の側の進行道路が優先道路(典型的には、四輪の進行道路のセンターラインが交差点を貫通している場合は四輪の進行道路は、自転車側に対し、優先道路になります)であった場合は、自転車の過失は、基本5割とされています。
交差点の直進車(自転車と四輪)同士の出合い頭事故事故 | 自転車の基本過失割合 | 別冊判例タNO38の事故類型 |
同幅員 | 20% | 【240】 |
自転車狭路、四輪車広路 | 30% | 【242】 |
自転車側に一時停止の標識有り | 40% | 【244】 |
自転車側が非優先道路、四輪側が優先道路 | 50% | 【246】 |
自転車が一方通行違反 | 50% | 【248】 |
以上からすると、交差点の出合い頭事故では、自転車と自動車が同一方向に進行していた場合と異なり、自転車の過失も結構、重く見られている感じもしないでもありません。これは、自動車の運転者が、予め自転車の動きを確認できているかどうかも関係していると思われます。
過失判断で迷うのが、同一方向の左側端を進行していた自転車が、交差点に至って、急に、右折し、これが2段階右折と評価できる場合は、交差点の直進者同士の事故とも、見れなくもない点にあり、仮に、このような見方をすると、自転車の過失を重めに判断することになります。これについて、明確な回答は難しいものの、私の経験からすると、裁判所が判断する場合には、自転車側に有利な過失認定をする可能性の方が高いようにも感じられます。