宮重法律事務所
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大阪地裁h27.12.9判決 | |
事案の概要 | 19歳女性。センターオーバーの車両の助手席に同乗。脳挫傷、急性硬膜下血腫、右内頸動脈閉塞症、脳梗塞等、左片麻痺。H23.5.1事故。入院223日を含んで、h25.6.29まで通院 h27.10.20にてんかん発作があり、今後通院を予定 |
事故後の意識消失 | あり。5月12日開眼。6月10日頃に意識清明となった |
自賠責の等級認定(裁判所の認定も同じ) | 2級1号 |
障害等級認定の補足的な考え方 | 2級の補足的な考え方;「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排せつ食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に家族からの声かけや看視を欠かすことができない」 比較3級「自宅周辺を1人で外出できるなど日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声かけや介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力新しいことを学習する能力障害の自己認識円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって一般就労が困難」 比較1級「身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの」 |
高次脳機能障害のの具体的な状態及び生活状況 | 意欲・自発性低下 記憶力・記銘力低下 情動障害、不安等の症状
室内歩行、排尿、排便、食事等日常生活動作のほぼすべてが、自立。 外出する際には、介助が必要 入浴や更衣には一部介助が必要(母親が、バスボードの設置、風呂のふたの開披、手が届かない部位の洗身。更衣は、襟まわりの広い服は自分で着替えができるが、片麻痺のためボタンやファスナーの付いた服は自分で着替えることができない。新しい着替えを準備してうながさないと着替えをせず、周囲のものが声をかけないとズボンを引き上げず肌や下着が見える状態のままにしてしまうことがある) 日常生活において随時指示や看視が必要 電話対応、買い物、金銭管理、食事の準備・片付け調理、火の始末、掃除、洗濯、衣類の整理、シーツ交換ゴミ出し服薬管理等ができない H26.4復学したが、進級が困難なためh27.2退学 その後、自宅に戻り、両親と生活 食事は自立しているが、周囲のものが声をかけないと、出されたものをずっと食べたり、アレルギーのあるものも食べたりしてしまう
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左片麻痺の状態 | 左片麻痺の身体機能性障害が残存 左側には注意が向かず、歩行すると左側によっていく、左半空間無視の症状 外出の際は、車いすに乗る必要があり、付添が必要 |
症状固定の状況 | 「外傷性・解離性右内頸動脈閉そくによる広汎な右大脳閉塞」について、h25.6.19症状固定 「脳器質性精神障害」との傷病名に関し、h25.6.29症状固定 |
将来介護 | 母親が67歳に達するまでの17年間は、同人による自宅介護費として、介護者の通院交通費を含め日額2500円 2500円×207.5日(症状固定後、1年間の実際の自宅介護日(症状固定時母親年齢49歳、1年後の母親年齢50歳))×0.9524(1年ライプ係数)+2500円×365日×11.6896(18年ライプ)-0.9524(1年ライプ)=1029万1752円
母親が、67歳以降、被害者の平均余命の47年間は、職業介護人による介護費として、日額6000円
6000円×365日×(19.1611【症状固定時21歳女性平均余命65年のライプ係数】-11.6896【母親が67歳に達するまでの介護期間18年に対応するライプ係数】=1636万2585円
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後遺症慰謝料 | 被害者本人分2000万円。両親の固有の慰謝料各200万円 |
母親による入院付添費 | 日額6000円×入院中179日=107万4000円。(被害者側請求日額単価は、母親の事故前の年収を日額に換算した1万1427円。母親は、付添介護のため退職を余儀なくされた) |
母親の入院付添のための家賃 | h23.5.9~6.13 家賃5万7000円、電気代1870円、ガス代7090円の請求を認める |
症状固定までの自宅介護費、通院付添看護費用 | 日額2500円×329.5日(自宅介護日数、センター入所中の期間を除く)=82万3750円 |
逸失利益 | 440万6600円【大卒女性全年齢平均】×100%×(17.8801【症状固定時21歳から67歳までの46年ライプ】-0.9524【21歳から、事故がなければ就労開始予定22歳までの1年ライプ】=7459万3602円 |
後遺症慰謝料 | 2000万円(2級の一般的基準額は2370万円)、両親分各200万円 |
上記事例では、近親者による自宅介護費を、母親が67歳になるまでの17年余の期間につき、日額2500円で認めています。別に紹介した3級の事例では、近親者の介護日額が4000円と認定されていたことからすると、やや、厳しめの認定といえるかもしれませんが、易怒性等の症状が指摘されていないことから、具体的な被害者の状況を前提に、介護者の負担の程度を認定し、これに応じた介護費が算定されたものとも考えられます。また、前記3級の事例では、職業介護人による介護費は認定されていません。
近親者の介護費用の日額単価について、被害者側が、近親者が、事故により退職を余儀なくされた勤務先での事故前の年収をもとに、日額単価を主張したのに対し、裁判所の認定は、あくまで、一般的な近親者の介護費用日額単価を認定したものです。
上記の裁判で認定された被害者の高次脳機能障害の状態、生活状況は、自賠責の等級認定の補足的な考え方を当てはめると、2級の内容に沿う内容であったと考えられます。
上記事例では、近親者固有の慰謝料を認定していますが、被害者本人の分として認定された後遺症慰謝料額と両親分の慰謝料額の合計が、ほぼ2級の一般的な慰謝料基準額と同程度の金額となっています。