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交通事故による高次脳機能障害の裁判事例

交通事故による高次脳機能障害(3級)の裁判事例

  東京地裁h25.12.25判決(控訴中)
事案の概要 H20.8.4事故発生。歩行者である被害者(28歳女性)と車両の衝突。左前頭葉脳挫傷
自賠責の認定 3級3号
初診時の意識障害 あり
頭部画像所見 左前頭葉に脳挫傷
認知機能に関する神経心理学的検査

あり。

H20.11 WAIS-Ⅲ

    言語性IQ90、動作性IQ65、全検査IQ76

H22.4 WAIS-Ⅲ

    言語性IQ94、動作性IQ83、全検査IQ88     

記憶機能障害のテスト

あり。

H20.11 三宅式記銘力検査

   有関係10-10- 無関係3-7-6

H22.4 三宅式記銘力検査

   有関係7-10-10 無関係7-10-10

 

上記認知及び記憶機能検査等に関する医師の所見 全体として改善傾向にあり、特に、記憶面での改善は著明であるが、情報処理速度の低下、計算力の低下、統合的な思考の困難さに加え、感情面のコントロールのしにくさが残っている状態が見られる。
神経系統の障害に関する医学的意見 認知・情緒・行動障害について「感情の変動が激しく気分が変わりやすい」「夜、寝付けない眠れないについて重度/頻回(深刻な生活困難さを起こす原因となっている
高次脳機能障害の状態、具体的な生活状況

自宅で妹と同居

被害者は、妹から声をかけられても、起床・就寝時間を守ることができず、

食事の時間や量は不規則

生活のリズムを保つことができない

1人で通院できるようになるまで、妹の付添により通院

その後、1人で通院しているが、定期外来通院も乱れがち

病院等との連絡調整や必要書類の作成等は妹ら家族がおこなっている

被害者は、1人で旅行に行ったり習い事に通ったりいているが、

妹以外の家族との会話は少ない。

言いたいことを伝えることができない。

相手の話の意味が理解できず怒りだすことがある

事故前、医療事務を仕事をしていたが、復職することなく退職

 

自賠責の3級認定に至る経過

h22.9.6症状固定。当初7級4号と認定されたが、異議申し立ての結果3級3号

理由として

自宅周辺を1人で外出できるなど、日常生活の範囲は自宅に限定されない。

声かけや介助なしでも日常生活の動作を行える

しかし

記憶や注意力、

新しいことを学習する能力、

障害の自己認識

円滑な対人関係維持能力などに

著しい障害があり、一般就労が全くできないか、困難

 

高次脳機能障害に関する自賠責の等級認定の補足的な考え方;

3級の補足的な考え方;「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されない。また、声かけや介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか困難なもの

比較当初認定の7級;「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」

5級「単純繰り返し作業などに限定すれば一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題があるこのため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの

 

2級「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作的には、排せつ食事などの活動を行うことができても生命維持に必要な身辺動作に家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの」

将来(症状固定後)の介護料

被害者(症状固定時30歳)については、

家族による随時の声かけ、見守り介護の必要がある

日額4000円×365日×18.6985(56年のライプ係数)

=2729万9810円

※声かけや介助なしでも日常生活の動作等ができる範囲は相当程度あるが、通常の日常生活を全うするためにはなお、生活の一部分において家族による随時の声かけおよび見守り介護の必要があるとの理由が述べられている

逸失利益

276万7520円(学歴計、全年齢計平均賃金の8割)×100%×16.7113(37年ライプ)

=4624万8856円

後遺症慰謝料 2240万円(3級の一般的基準額は1990万円)

 

上記の事例では、当初の自賠責の高次脳機能障害に関する等級認定では、7級が認定されたが、被害者側の異議申し立ての結果3級に変更された経緯があります。

理由としては、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力に著しい障害があって一般就労を全くできないか困難であるという理由が挙げられていますが、

やはり、重要なのは、症状固定度、高次脳機能障害の状態として

現実に就労ができる状態と認められるかどうかという点

であったと考えられます。

当初、7級が認定されていることからすると、被害者の高次脳機能障害に関する具体的な状況の認定は、必ずしも容易ではないことに注意すべきであると思われます。

以上からすると、特に、就労が可能な状態であるか否かという点に注意して、自賠責の審査機関に提出する近親者の陳述書や医師の意見書を提出する必要があるケースもあるということになります。

本件被害者は、「1人で旅行に行ったり、習い事に通ったりしている」という事情も指摘されていますが、他方で「妹以外の家族との会話は少なく、言いたいことを伝えられず、相手の話が理解できずに怒りだすことがある」という状況や、その他の判決で指摘されている状況からすると、就労は困難な状況と評価せざるを得ないという結論になったと考えられます。

また、3級の補足的な考え方においては「声かけや、介助なしでも日常の動作を行える」とされていますが、本件では、家族による将来の看視費用の請求も1日4000円を基準に認定されています。

「妹から声をかけられても起床・就寝時間を守ることができず、食事の量や時間は不規則であり、生活のリズムを保つことができない。通院もみだれがちで、病院との連絡調整や必要書類の作成は家族がおこなっている」等の事情から、家族による看視費用の必要性が肯定されたと考えられます。

3級の補足的な考え方を形式的に判断することなく、被害者の具体的な生活状況を調査した上で、近親者等の看視の必要性について、検討し、損害の有無とその金額を整理する必要があることがわかります。

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