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交通事故による従業員の会社(使用者)に対する責任

交通事故による従業員の会社(使用者)に対する責任

従業員が、業務として、会社の車両を運転中に自損事故などを起こしたときは、会社から、従業員に対する被害の賠償請求は、信義則により制限されます。      

従業員が、勤務先の会社の業務として、車を運転中、過失により、電柱に衝突するなどして、自損事故を発生させ、会社の車を損壊し、会社に修理費等の損害が発生した場合、従業員は、その損害を会社に弁償する責任をおうでしょうか?

 

交通事故による従業員の会社に対する責任(裁判例)

この点については、例えば、以下のような裁判例を挙げることができます。

 

 

神戸地裁h25.7.25

 

事案の概要 会社所有の普通貨物車を、従業員が運転中、横転事故を発生させて、会社から、車両損害と休車損害等の請求がなされた事例
事故態様 事故の原因は、当該従業員の居眠り運転によりハンドル操作を誤ったことによるもの
会社の損害額 ①積荷損害保険免責額6万円②自動車対物保険免責額20万円③会社所有車両時価額369万3240円④車両処分費用66万円⑤買い替え諸費用7万円⑥休車損害168万4128円(1日当たり1万5888円の稼働利益について、代替車両購入までの106日分)⑦破損積載物の引き上げ運賃8万9250円⑧運行中止キャンセル料10万円(破損引き上げのため、他の車両を使用し、当該他の車両で予定していた運行を中止したことによりキャンセル料の負担が発生、以上合計655万6618円
従業員のが負担すべき割合 30%196万6985円
理由

会社は、17名程度の従業員と、同数の車両を有し、運送業を営む会社

事故を起こした従業員は、高額とはいえない賃金を受領し、従前の勤務態度は良好であった

会社としては、運送業を営む以上、交通事故が発生する危険は常にあるにかかわらず、会社は、自損事故への車両保険の加入を取りやめていたこと

従業員の勤務状況が過酷なものであったり、日常的に積載量オーバーで車両を運転することを強いられていたような事情は認められない

事故は、従業員の過失に基づくものである

以上の事情等を総合的に考慮し、信義則により、従業員の負担を上記損額額の3割と判断する

 

上記のような裁判例の考え方に基礎となっている最高裁の判例として、昭和51年7月8日判決があり、これによれば

「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、使用者としての損賠賠償責任を負担したことにより、損害を被った場合は、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の求償を請求することができるものと解すべき」

と判断されています。

この判断は、その内容としては、従業員が第三者に与えた損害を、会社が使用者責任に基づき、当該第三者に弁償した後に、その弁償した金額を、従業員に対して、求償する際の制限を認めたものですが、上記のように、従業員の過失による自損事故により、会社の財産(車両)が被害を受け、その被害について、会社が、従業員に対し、損害賠償請求権を行使する際にも、同様な制限が認められているということになります。

そして、上記の事例では、従業員の負担割合を30%としていますが、類似の事例において、名古屋地裁h21.9.9判決や神戸地裁h26.9.19判決は、従業員の負担すべき割合を25%としています。

25~30%が従業員が負担すべき金額とすると、従業員の保護に厚いように感じられますが、上記の事例を見るとわかるとおり、会社から請求のある金額は、車両損害に限らず、休車損害や、廃車費用等の請求を広く請求してくる可能性があり、そうすると、25~30%とはいえ、相当な額の負担を従業員として強いられる可能性が高くなります。

従業員としても、安全運転を心がけることは勿論ですが、会社としても、事故に備えて、必要な保険への加入が望ましいといえます。

 

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