宮重法律事務所
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ここでは、国産車で、主に、高級車とまでいえない車両についての評価損について、説明しています。
交通事故により、車両が、損傷し、修理費が発生した場合、車両の所有者としては、加害者に対し、その過失割合に応じた、修理費を請求できることは言うまでもありません。
また、修理費に限らず、事故歴が残ったことや、損傷の程度がひどく、車両の構造部分にまで相当程度の損傷が及んだとか、あるいは修理したが、完全な原状回復に至らなかったような場合には、修理完了後も、車両の評価額が下がったことによる、損害として、評価損を請求できる場合があります。
・技術上の評価損
修理しても完全な原状回復ができず、機能や外観に何らかの欠陥が存在していることに対応する評価損
・取引上の評価損
修理費をして原状回復され、欠陥が残存していないときでも、中古車市場において価格が低下した場合の評価損
上記のうち、技術上の評価損が損害として、認められることは、概ね争いがないようですが、実際には、修理技術の進化により、技術的に修理できないということはほとんどないのではないかという指摘があります。
取引上の評価損については、これを認めない見解もあるようですが、裁判実務上では、一般論としては、これを認めた上で、具体的な事情に応じ、その損害発生の有無、金額を発生しているとみられるようです。
・算定方法
修理費に対する割合で認める裁判例が多く、初年度登録からの期間(例えば2年以内程度)、走行距離、修理の程度等を考慮し、修理費の3割程度の範囲内で認める例が多いとされています。
・評価損認定の傾向について
裁判例の傾向からすると、外国車ないし国産人気車種で初年度登録から5年(走行距離6万㎞程度)以上、国産車では3年(走行距離4万㎞)以上を経過すると評価損が認められにくいとの傾向が指摘されています。ベンツクラスでも、登録後4年、走行距離5万㎞くらいになると評価損は認めにくいのではないかという見解もあるようです。
実際に、評価損が請求できるかよく相談があるのは、購入してあまり経過していない時期に、事故にあった場合で、高級車である場合に限りませんが、外国車で相談を受ける例はそれほど多くありません。国産車の裁判例を挙げると以下のとおりですが、修理費の10%程度の評価損を認める例が多いようです。
横浜地裁h22.12.27 | |
車名、車種 | 国産大衆車 |
初年度登録からの期間 | 3か月 |
走行距離 | 704㎞ |
修理費 | 55万2135円 |
評価損の認定額 | 5万2584円 (修理費の10%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
名古屋地裁h22.7.9 | |
車名、車種 | トヨタアルファードG MS |
初年度登録からの期間 | 3年6か月 |
走行距離 | 4万3974㎞ |
修理費 | 192万7936円 |
評価損の認定額 | 19万2794円 (修理費の10%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
東京地裁h19.8.28 | |
車名、車種 | 国産の普通乗用自動車 |
初年度登録からの期間 | 2年8か月 |
走行距離 | 2万4227㎞ |
修理費 | 105万8350円 |
評価損の認定額 | 10万5835円 (修理費の10%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 不明 |
東京地裁h23.5.10 | |
車名、車種 | レクサス |
初年度登録からの期間 | 3年 |
走行距離 | 4万3769㎞ |
修理費 | 181万1177円 |
評価損の認定額 | 18万1117円 (修理費の10%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
以下の2つの裁判例は、修理費に対し、40~50%の評価損を認めた事例ですが、スカイラインの事例については「後部継目のシーリング材の形状の差などが修復できず」とかシーマの事例について「外観上損害が残存している」として、完全な原状回復ができなかった技術上の評価損の事例となります。
さいたま地裁h19.8.3 | |
車名、車種 | 日産シーマ |
初年度登録からの期間 | 3年6か月 |
走行距離 | 9万5000㎞ |
修理費 | 103万1016円 |
評価損の認定額 | 40万円 (修理費の約40%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
東京地裁h23.11.25 | |
車名、車種 | スカイラインGTR |
初年度登録からの期間 | 3か月 |
走行距離 | 945㎞ |
修理費 | 141万5478円 |
評価損の認定額 | 70万7739円 (修理費の50%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
以下の事例は、取引上の評価損で、修理費の20%の評価損を認めた事例です事故による損傷が骨格部分に及んでいたことが指摘され、他方で、高級車の部類には属しないと、評価損認定額に関する理由が述べられています。
神戸地裁h22.5.11 | |
車名、車種 | エスティマゴールド |
初年度登録からの期間 | 1年11か月 |
走行距離 | 9938㎞ |
修理費 | 125万2600円 |
評価損の認定額 | 25万0520円 (修理費の20%) |
骨格部分やエンジン等への事故による影響 | 有り |
車両に修理費の被害を受け、加害者側の保険会社に評価損を請求しようとすると、過失割合に争いがない、例えば、追突事故のような場合でも、評価損に相当する金額を争うだけでなく、金額に争いのない修理費についても、物損についての示談成立後でないと、修理費の支払いをしないという回答を加害者側の保険会社がしてくる例が少なくないようです。
修理費の入金が、加害者側の保険会社からないと、修理を担当した修理工場に修理費が入らず、迷惑がかかるため、やむを得ず、示談に応じるケースもあるようです。
一旦、自己負担で、修理費を修理工場に支払い、その後、修理費と評価損を請求できればよいのですが、経済的な事情により、なかなか難しい場合が少なくないようです。