宮重法律事務所

〒730-0017
広島県広島市中区鉄砲町1−18 佐々木ビル9階

広島駅から徒歩15分程度

受付時間
午前9時00分から午後6時00分
休業日
土曜、日曜、祝日、お盆、年末年始
(ただし、事前にご連絡いただければ、
可能な範囲で休日も対応します)

お気軽にお問合せください

082-258-2043

労働能力喪失期間について(交通事故)

労働能力喪失期間について(交通事故、14級を中心)

14級の神経症状であっても、労働能力喪失期間が10年以上と認定される事例はありあmすが、加害者側にとっても、ある程度、理解できる理由付けが可能な事案である必要があります。          

 

神経症状による後遺障害については、逸失利益を算定する際の前提となる労働能力喪失期間に関し、むちうち症による神経症状の場合には、12級で10年、14級で5年に制限するのが、裁判例の傾向として強いと思われます。

他方で、神経症状は、むちうち症だけではなく、骨折後や靭帯損傷等の傷害によっても、当然、生じ、さらに、骨折後の傷害自体は、骨癒合が良好で骨折自体はちゆしたと認められるような場合にも、痛みという形の神経症状は残ることはあり、これについて、14級や12級の神経症状の後遺障害が認定されることもあります。

では、このような場合には、労働能力喪失期間はどのように判断すべきかというと、これに関する解説をみると(平成19年赤本下巻75頁)、結局は事実認定の問題であり、事案ごとの判断になるとの見解が示されています。

しかし、裁判例で、どのような事案について、どの程度の労働能力喪失期間が認定されているかを、最近を裁判例を参考に整理することも、参考になる部分もあろうかと思いますので、以下のとおり、整理してみました。このページでは、14級の認定事例について、検討しています。 

  静岡地裁 平成28年5月13日判決(確定)
事案の概要 打球が直撃し、頭蓋骨骨折等の重傷を負った事例
判断の要旨

事故後、てんかん発作はおきていないが、今後、おきないと言い切れないこと、他方で、ある程度活動的な生活をおくれていること、鋭波(脳波)の発生頻度は減少傾向にあること等(ただし、てんかん性棘波はなし)

 

労働能力喪失期間の認定内容 労働能力喪失期間は10年(喪失率5%)

この事例は、交通事故ではないですが、傷害自体は、頭蓋骨骨折等の重傷を負った事案ではあります。てんかん発作がなかったことや、事故後もある程度活動的な生活を送っていたという状況が認定されたため、14級認定にとどまり、労働能力喪失期間も10年の認定にとどまったものを考えられます。

  福岡地裁小倉支部 平成28年5月13日判決(確定)
事案の概要 バイク運転の被害者と四輪が衝突し、頚椎棘突起骨折の傷害等が生じた。
判断の要旨

本件事故により、原告の第7頸椎棘突起の骨折が生じたところ、骨折が完全には癒合せず、偽関節(注;骨折部の骨癒合プロセスが完全に停止したもの)が生じ、このため、頸部痛等の症状が残存しているものと認められる。そして、原告の治療にあたった医師が「項部周辺の痛み、特に隆椎の圧痛、左上肢の知覚低下などの症状は今後も持続すると考えられる。」と述べていることからすると、67歳までの37年間にわたって労働能力を喪失するものとみるのが相当である。

労働能力喪失期間の認定内容 労働能力喪失期間は37年(喪失率5%)

この事例では、偽関節が生じ、これが神経症状の原因となっていると認定されているため、長期にわたる労働能力喪失期間の認定も理解しやすいのではないかと考えられます。

  神戸地裁 平成26年6月20日判決(確定)
事案の概要 左尺骨骨折後に、「左肘が痛む、左肘を動かしていると痛みが悪化する、左小指に力が入りにくい、物をつかみにくい等の書状が生じる」、自賠責14級、労災12級認定された
判断の要旨

原告の後遺障害は、後遺障害等級併合14級に相当するこ と、具体的には、頸椎捻挫の後遺症及び左尺骨肘頭骨折の後遺症であり、残存する症状は、左肘の痛み・しびれ等、頸部痛などの神経症状があること、原告の業務は食品等の包装フィルムを製造する作業であるところ、後遺障害のために大量の包装 フィルム材料の持ち運びや薄いフィルムを貼り合わせる緻密な作業に困難を感じて いることなどが認められる。これらのことからすると、原告は、本件事故により負 った傷害の後遺障害のため、労働可能年齢である67歳までの21年間にわたり5 %の労働能力を喪失した」と

労働能力喪失期間の認定内容 労働能力喪失期間は21年(喪失率5%)

この事案では、他覚的所見はないものの、骨折と神経症状の関連性が認められ、また、仕事の内容からも、労働能力への影響がみとめられやすい状況であったため、長期の労働能力喪失期間はが認定されたものと考えらます。

  大阪高裁 平成21年9月10日判決(確定)
事案の概要 横断歩道を自転車で横断中、左折タクシーに衝突され、転倒しないように右足で踏ん張り、右ひざ痛を発症、次第に悪化、杖歩行となった。
判断の要旨

RSD(注;この診断は、原因に対して不釣合いな痛みという臨床的症状に基づいて行われ、後記のとおり、自賠責の後遺障害の認定のためには、①関節萎縮等の3要件の充足が必要となります)は、発症機序が未解明で、受傷機転から窺える傷害の程度と全く整合しないこともあり得る病態であることに加え、RSDと認定されると損害賠償実務において後遺障害等級9級10号か7級4号の認定がなされるものであるから、その認定・判断には客観的な判断基準が必要と考える。そうすると、RSDと認定するには、RSDの4主徴(疼痛、腫脹、関節拘縮、皮膚変化)を含んだ自賠責保険上のRSD認定(労災保険における認定も同様)の3要件(①関節拘縮、②骨萎縮、③皮膚変化(栄養障害、温度))を充足することが必要と言うべきである。これを本件においてみるに、上記3つの要件のうち、①の関節拘縮は認められるものの、②の骨萎縮も③の皮膚変化も認められないから、左下肢も右膝もRSDに罹患しているとは認定できないと言わざるを得ない。 しかしながら、ア 原告の左下肢は本件事故による傷害を負ったことは明らかであり、事故当時から一貫して痛みなどを訴えていること、イ RSDと認定できない以上、原告の症状を医学的に説明することは困難ではあるものの、単なる故意の誇張ではないと認められることに照らせば、後遺障害等級14級9号には該当すると認める。また、早期に馴化は期待できないため、労働能力喪失期間は15年と認める。

労働能力喪失期間の認定内容 労働能力喪失期間は15年(喪失率5%)

この事案では、RSDの認定が問題となり、該当性は否定されたものの、客観的所見がないものの、自覚症状が重いこと、早期に馴化する可能性はひくいことが指摘されています。

以上の14級の事案で、10年以上の労働能力喪失期間を認定した事例を見ると、骨折後の神経症状については具体的な生活状況や仕事内容も勘案した上で、長期の労働能力喪失期間を認めた事例があります。また、RSDが疑われるような事例については、被害者の自覚症状の程度も考慮した上で、長期の労働能力喪失期間を認定した事例もあります。

いずれにしても、14級の神経症状について、10年以上の労働能力喪失期間を認定した事例については、事案に内容に応じて、加害者側にとっても、ある程度まで理解できる理由付けがなされることができる事案であると考えられます。

 

 

 

お問合せはこちら

メールでのお問合せは、24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

お問合せはお気軽に
082-258-2043

サイドメニュー

ごあいさつ

弁護士
宮重義則

親切・丁寧な対応をモットーとしておりますのでお気軽にご相談ください。