宮重法律事務所

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交通事故による主婦の休業損害について

交通事故による主婦の休業損害について

ここでは、主婦の方(有職の方を含みます)の休業損害について説明しています。

交通事故により、主婦の方が、被害に遭われた場合、事故による治療のために、家事労働に支障が出た場合、家事労働の休業による休業損害が請求できます。

問題は、その単価ですが、これについては、女性学歴計、全年齢の平均賃金を用いることが多く、この平均賃金が、いくらかというと、例えば、平成27年の平均賃金は、372万7100円となっています。

これを365日で割って、1日当たりの休業損害単価を出すと、1日当たりの単価は、1万0211円となります。

 

次に問題となるのが、この単価を前提に、どの程度の期間と割合によって、休業損害を認定するかという点ですが、これは、個別の事案に応じて、判断はまちまちであるため、個別の裁判例を見ていただくのがよろしいかと思いますので、事例を挙げてご説明したいと思います。

交通事故による主婦の休業損害について判断した事例

  東京地裁H28.4.26(控訴棄却、確定)
事案の概要 追突事故。頚部痛、右上腕部、前腕部、右大腿部痛、頭痛、肩運動痛、腰痛の症状があった
被害者の職業 主婦として家事に従事しながら、夫の経営する飲食店の手伝いもしていた
通院期間

H16.5.17~H17.3.10、4か月空白期間がありH17.7.9症状固定の診断(4か月の空白期間を含め1年2か月通院)

通院実日数クリニック(医院)に18日、整骨院に152日

裁判所の判断 休業期間H16.5.17~H17.3.10までの298日間、休業割合は全期間通じて3割と判断する

休業損害の認容額

315万1980円÷365日×298日×0.3=77万2019円
判断の理由 H16.9上旬には、片道約10時間航空機に乗って海外旅行に行っていることから、被害者は、H16.8頃までには、家事をする上で大きな支障はなかったはず。

以上のように、通院期間を通じて、3割を主婦としての休業損害として認めています。なお、被害者は、夫の自営業も手伝っていたという点で、家事労働のみならず、自営業である飲食店の仕事も行っていたことになりますが、このような場合に限らず、パート等の仕事も行い、家族を持ち、家で家事労働も行っている場合には、仕事の収入と、家事労働として収入(前記のとおり、女性の平均賃金を用いるため、年収370万円程度になります)を比較し、高い方の収入をもとに、休業損害を認定するのが、通常の裁判上の取扱になっています。パートの主婦の方の場合は、通常は、家事労働としての、休業損害を認定してもらった方が、認定額が高くなるため、家事従事者としての休業損害を請求するのが通常です。

また、上記の事例で、休業損害の基礎となる年収額315万円となっているのは、被害者が、事故前の別の事故による通院を継続中であったという事情があったため、一般の事故当時の女性の平均賃金350万2200円の9割を基礎収入として認定するとの判断がなされたものです(このような取扱いを寄与度減額などと呼んでいます)。

ここで、上記の事例に即していうと、この事案では、被害者は、H17.7.9の症状固定日から9か月後に、再度、頭痛等の訴えが生じ、その後、9年以上にわたって家事が全くできなかったとして、家事労働に対応する休業損害として3000万円以上の請求がなされたようですが、裁判所は、症状固定後の再度の頭痛の訴えやこれに基づく休業損害については、事故との相当因果関係を認めなかったようです。

また、上記の事例では、病院の実通院日数が少なく、整骨院への通院が多い点も気になりますが、この裁判では、整骨院への通院の必要性や相当性は、あまり問題にならなかったようです

 

交通事故に基づく主婦の休業損害を認定した事例(その2)

  横浜地裁H26.6.26(確定)
事案の概要 追突事故。頚椎捻挫、頭部打撲傷。脳脊髄液減少症を負ったとの主張もあり。14級9号の後遺障害認定
被害者の職業 家事労働と自営業(宅配荷物を配送する業務)に従事する兼業主婦
通院期間

H22.6.7~H23.10.12(16か月で症状固定したと裁判所は認定した。同日までの主治医が、治療を中止したため)

ただし、被害者の主張した事故と相当因果関係のある通院期間は、さらに、8か月後のH24.5.30まで(24か月)

通院実日数;クリニック(医院)に35日

裁判所の判断

休業期間H22.6.7~H22.12.31までの208日間は、休業割合は80%

H23.1.1~H23.10.12までの285日間は、休業割合40%

休業損害の認容額

1日当たり休業損害単価9477円(平成22年女性平均賃金345万9400円÷365日=9477円)

9477円×0.8×208日=157万6972円、9477円×0.4×285=108万0378円

以上合計265万7350円

判断の理由 被害者は、H22.6に6日、7月に9日、8月に14.5日、9月に16日、10月11月に各20日、12月に18日自営業を休業し、H23.1~は自営業に従事した。後遺障害は14級認定。

上記の事例では、通院期間は16か月が、事故との相当因果関係があるものと認定されましたが、対応する通院実日数は、35日で、事故直後から、自営業も一定に行っていることからすると、結構、長い期間にわたる休業期間と高めの休業割合が認定されたように思われます。また、事故前の平成21年度の宅配業による売り上げは、年間285万円、事業所得は72万円程度だったようですが、主婦の休業損害の際に用いられる女性の平均賃金の方が、年間345万9400円になり、こちらの方が、高くなるため、高い方の基礎収入が損害算定に際して採用されたと思われます。

この事案では、上記のように通院実日数は少ないものの、脳脊髄液減少症の主張がなされ、これ自体は、判決により認められなかったものの、自覚症状の訴えが、比較的強かったため、長い休業損害と高めの休業割合が認定された可能性はあります。

このようにみると、勤務先により作成される休業損害証明書により、休業損害額が、かなり客観的に認定される会社員の場合と比べると、主婦の休業損害の認定については、事案の内容に応じた裁判所の裁量による損害額の認定が、かなり働く部分ではないかという印象も受けるところです。

仕事を持っていらっしゃる主婦の方の場合、主婦としての休業損害の期間と割合を認定する際に、仕事の稼働状況もかなり参考にされると思います。仕事の稼働状況に変化がなければ、主婦としての休業損害も、低めに認定される場合もありうると思います。

交通事故に基づく主婦の休業損害を判断した事例(その3)

  名古屋地裁H27.4.17(確定)
事案の概要 被害者同乗の直進車両と、交差道路から、左折進入してきた車両の衝突事故。頭部外傷、頚椎捻挫、左肩関節挫傷。14級9号の神経症状の後遺障害認定
被害者の職業 有職主婦
通院期間

H23.3.11~H23.9.13(6か月で症状固定)

裁判所の判断

休業期間H23.3.11~H23.5.21までの72日間は、休業割合は100%

H23.5.22~H23.7.22までの62日間は、休業割合50%

H23.7.23~H23.9.13までの53日間は、休業割合20%

休業損害の認容額

1日当たり休業損害単価9750円(平成22年女性平均賃金355万9000円÷365日=9750円)

9750円×(72日-60日【ベビーシッター料金の請求を認めた期間】)=11万7000円、9750円×0.5×62日=30万2250円、9750円×0.2×53日=10万3350円

以上合計52万2600円

判断の理由

被害者は、h23.3.11~5.21までの間、肋骨骨折と全身打撲のため、医師から家事、就労が全く不可能と判断され、それ以降も安静が指示され、7月中頃から7月30日にかけて、短時間の就労を再開した。

上記の事例では、事故直後は、高めの休業割合が認定されており、医師の診断により、休業割合100%と判断されています。

その後は、約2か月経過するごとに、50%、20%と認定休業割合が変化しています。

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